ウィンダミア湖を小型の木造船で対岸へ渡って、船を降りたところで少し待つとマイクロバスがやってきました。私は見晴らしの良い運転席のそばに座りこみました。石垣の間の狭い坂道はマイクロバスが通るにはぎりぎりの幅です。
マイクロバスをHawksheadの村で降り、まず生協coopで昼食の買い物をしておきました。牛乳は1パイントのプラスチック容器に入っています。日本で見なれた紙パックの牛乳が売られてないのは不思議な感じです。
ここからconiston湖までは峠道を越えて歩いていくことにしました。牧場を通るフットパスがあるはずだと思うのですが、細かく書かれた地図を持っていませんので確認できませんでした。自動車の通る道なら間違いないので大きな道、といっても車の通る幅だけで歩道もない道を歩いて行くことにしました。
両側が石垣になっている坂道は登りがきつく、暑い日ざしが照りつけます。峠を超えてもまだコニストン湖は見えてきません。湖尻へ向かう道と分かれて左へ曲がり、ハリハウであるBankGroundFarmをめざして歩きます。やがて道は森の中を進んでいきました。何とかGround Farmと名付けられた農場のそばをいくつか通り過ぎて、湖とは離れた高いところを通る道を湖岸と平行に進んでいきました。
あこがれのハリハウに着いたのは午後3時をすぎていました。湖に向かって農場へ向かう道を入っていくと車が何台もきています。見渡すと湖の向こうにはカンチェンジュンガがそびえています。ハリハウはいくつかの棟に分かれていました。
小さな玄関から入ったところに受付がありました。係と思われる人に申し込んだE-mailのプリントをザックから取り出して渡しました。この方がメールをもらったBettyさんでしょうか? それから、玄関を出て 別の建物に案内してもらいました。納屋Barnと書かれた棟です、たぶんもとは納屋だった建物だったのでしょう。納屋という名にふさわしくない りっぱな3階建てで石積みのしっかりしたつくりです。中は小さなホテルのようにドアがいくつかあります。私の部屋は湖側に窓があり、ベッドも2つあります。廊下へでればバスタブのあるお風呂があります。B&Bですがここは民宿というよりペンションの感じでした。ちょっと期待していた田舎の農家の感じではありません。あこがれのハリハウはもっともっと農家そのものであってほしかったのですが。
でもまず、ひさしぶりの風呂に入らなくっちゃ。ずっとシャワーばかりだったでお湯につかるのはほっとします。ゆっくりしてから、ラウンジの場所を聞きに行きました。朝食をとる部屋を抜けていくそうです。そして見つけました、ここがランサムファンの部屋です。いろいろと書物が置いてあります。記帳できるノートを見つけたので、やっとハリハウへ来られたことを記しておきました。
ラウンジのガラスのドアを開けると湖へつづく草地をなだらかに下っていけます。湖からのやわらかな向かい風にジグザグにタックしていきたい気持ちをぐっと抑えて、ちょっと早足でまっすぐに草地を下っていきます。湖岸にはちいさな艇庫があり、そしてちいさな突堤もありました。残念ながらヨットは置いてありません。
部屋に戻って、今日の残りの時間をどう使おうかと地図などをベットに広げて考えます。「スカラブ号の夏休み」に出てくるDog's Home犬小屋へなら、今からでも行けるかもしれません。あしたはヤマネコ島への航海があるので 行けるのは今日しかないのです。
さあ、そうと決めれば急いで出発です。ちいさなザックに地図などを詰めて、ハリハウを後にして Footpathを南へ歩き始めました。始めは牧草地を通り抜けて行きます。草地の間の道はやわらかな泥のところがあり、牛さんの忘れ物も残っています。やがて道路に出て 右に湖を見下ろしながら進んでいきました。刈り取った牧草を機械で集めているのが見えます。ブラントウッドの邸宅を過ぎて道は湖岸のすぐそばを進んでいきました。ガイドブックである「In the footsteps」の記述とランサマイト先輩たちのサイトにあった記録を見比べながら歩いていきました。
車の通る道路から 湖とは反対側の谷へ入るところがわかりにくかったのです。でも、道をふさいでいるゲートの杭に付けられた小さなfootpathの標識を見つけました、車の入れるだけの道幅ですが 大きな幅広の木のゲートが閉まっています。footpathの標識の矢印に従って柵を乗り越え、谷の山道へはいりました。この谷の道だろうとは思っても自信はありません。はじめは道幅が数mあったですが、やがて草地の道から岩ばかりの道になり、森の中の山道らしく細くなりました。方位磁石で北東に向かっていることを確かめます。この道で良いのかわからないけれど、もう少し進むしかありません。しばらく岩でごろごろした歩きにくい道を進んで行きました。
やがて、森の前方にちいさな小屋が見えました。これかな、岩を積み上げた小屋です。大きな窓がひとつと木のドアがひとつ。そうです 見つけました、ランサムの描いた挿し絵のとおりです。ドアはひもがかかっているだけで簡単に開けられました。中に入ると窓のあったところからたくさん光が入ってきます。小屋は思っていたよりも広く、ドロシアが使った暖炉もあります。少し窓の石積みがこわれかけていますが、しっかりできた小屋です。外に出て、大きな窓から中をのぞいたりしてみました。暖炉のところは屋根に石組みの煙突が伸びていました。小屋の裏側は草が茂りすぎていて、ぐるっと一周回れません。
遅くならないうちにハリハウへ帰りましょう。ディックとドロシアが使った犬小屋をじぶんだけで探し出せたので とても満足です。ゆっくり歩いて帰ることにします。探検を終えて、農場の牧場を通り抜ける 同じfootpathを歩き ハリハウへ帰りました。帰りにも1時間くらいかかったでしょうか。
ハリハウはB&Bです。朝食とベッドの意味ですので 夕食は提供されません。レストランも食糧を買う店も 湖のこちら側にはなく、今夜の食事は固くなったパンとジュースくらいしかありません。ポットでお湯をわかせば インスタントコーヒーが作れるので、湖の見える外のベンチでゆっくりしましょう。今夜はあこがれのハリハウに泊まれるのです。
さわやかな風と、湖の向こうにはカンチェンジュンガ、ゆっくり日が暮れていきました。